マスタードはブルゴーニュ大公の食卓に欠かせないものでした。そのレシピは中世には完成して世界中に広まり、お料理の味を引き立てています。あのオバマ前大統領もハンバーガーの薬味に選んだのも、ちょっとフランス風にマスタードでした。

ディジョンマスタードはディジョン産?

もともとマスタードの原料であるカラシはブルゴーニュで栽培されていましたが、第2次世界大戦後は生産が工業化され、カラシの種は北米や東欧からコンテナで運ばれてくるようになりました。意外に思われるかもしれませんが、ディジョンマスタードは原料の産地が制限されたAOP(原産地呼称統制)ではなく、世界中どこででもレシピ通りに作れば「ディジョンマスタード」と名乗れるようになっています。そのレシピとはとてもシンプルで、カラシの種(クロガラシ種)を精製してブドウの未熟果から造った酢を混ぜるだけ。では、ブルゴーニュ産以外のカラシの種から造ったマスタードはどれもみな同じなのでしょうか?そんなことはありません!今でもボーヌには時代に逆らって地元産にこだわっているメーカーが残っています。

ボーヌ産へのこだわり

1970年代にマスタードメーカー各社が量産化に乗り出したとき、ボーヌの小さな家族経営のメーカー「ファロ」は独自路線を歩むことを選択しました。職人的な作りにこだわった上品な味わいのマスタードは、ブルゴーニュおよび全国の星付きレストランのシェフたちがこぞって使っています。さらに90年代には、若き社長マルク・デザルメニアン氏がブルゴーニュ地方内でのカラシ栽培を復興させ、2009年にはIGP(原産地保護)の「ブルゴーニュ・マスタード」が誕生しました。このマスタードはカラシの種が現地産であること、混ぜるワインはブルゴーニュ産白ワインであること、そしてボーヌで製造することがIGPの規定で定められています。

ファロ社のマスタード工場を見学

ファロ社では、オーディオガイドで巡る博物館コースと生産現場を巡る工場見学コースと2つの見学コースをご用意しています。もし、見学するだけのお時間に余裕がなくてもご安心ください。見学コースの手前にある売店スペース「Enjoy Fallot」では、新製品の試食や生マスタードの販売、マスタードを使ったレシピのアドバイスを提供しています。